貸し倉庫に住むのは問題ない?倉庫兼住居のリスクと貸主の対応方法

コンテンツ 非表示

1.貸し倉庫に住むことはできる?

貸し倉庫は、本来、商品や資材、荷物などを保管するための建物ですが、借主から「倉庫の一部を住居として使用したい」「倉庫兼住居として借りたい」といった希望が寄せられることがあります。

では、貸し倉庫に住むことはできるのでしょうか。

結論からいえば、貸し倉庫に住むことが一律に禁止されているわけではありません。しかし、倉庫として使用している建物を、そのまま住居として使用できるとは限りません。

建物には、建築基準法上の用途があり、倉庫と住宅では求められる建築基準や設備などが異なります。そのため、倉庫を住居として使用する場合には、建築基準法や消防法などの関係法令に適合しているか確認する必要があります。

また、建物の構造や設備によっては、居住に適した環境が整っていない場合もあります。

さらに、倉庫として賃貸借契約を締結している場合、借主が貸主の承諾なく住居として使用することは、契約上の使用目的に違反する可能性があります。

貸主としても、借主から住居としての使用を希望されたからといって、安易に承諾することはおすすめできません。

2.貸し倉庫を住居として貸すことをおすすめしない理由

倉庫として使用する建物を、住居や倉庫兼住居として貸し出すことは、私は基本的におすすめしていません。

倉庫と住宅では、建物に求められる基準や設備、使用方法などが異なります。また、住居として使用することによって、貸主が想定していなかったトラブルが発生する可能性もあります。

建築基準法などの法令上の問題

建物には、建築基準法上の用途があり、倉庫と住宅では適用される建築基準が異なる場合があります。

そのため、倉庫として建築された建物を住居として使用する場合には、用途変更に関する手続きの要否や、住宅として求められる建築基準への適合などを確認する必要があります。

また、建物が所在する用途地域によっては、住宅としての使用が制限される場合もあります。

貸主が住居としての使用を承諾したとしても、それだけで法令上の問題が解消されるわけではありません。

火災や事故などの安全面の問題

倉庫は、商品や資材などを保管することを主な目的として設計されているため、必ずしも人が日常生活を送ることを想定した構造や設備になっているとは限りません。

例えば、居住に必要な採光や換気、避難経路、消防設備などが十分に確保されていない場合があります。

また、倉庫内に可燃物や危険物などが保管されている場合には、火災などの事故が発生した際に被害が拡大するおそれもあります。

万が一、居住中の借主が事故に遭った場合には、建物の状態や事故の原因、貸主の対応などによって、貸主の責任が問題になる可能性もあります。

住宅としての設備が整っていない問題

倉庫には、トイレや流し台、給湯設備などが設けられていることもありますが、これらは必ずしも日常生活での使用を想定したものではありません。

住居として使用する場合には、浴室や台所、給排水設備、空調設備などが必要になることもあります。

そのため、借主から設備の増設や改修を求められたり、借主が無断で設備を設置したりする可能性も考えられます。

また、生活排水の増加や電気設備への負荷など、倉庫として使用する場合には想定していなかった問題が発生することもあります。

火災保険などの保険契約上の問題

貸主が加入している火災保険などは、建物の用途や使用状況を前提として契約されている場合があります。

そのため、倉庫として保険契約を締結している建物を住居として使用した場合、契約内容によっては保険会社への通知や契約内容の変更が必要になることがあります。

また、実際の使用状況が保険契約上の条件と異なっていた場合には、事故発生時の保険金の支払いに影響する可能性もあります。

住居としての使用を認める場合には、事前に保険会社へ確認することが重要です。

賃貸借契約や明渡しに関する問題

倉庫として貸し出した建物であっても、実際に借主が居住している場合には、契約終了時にトラブルが発生する可能性があります。

例えば、借主が倉庫内を生活の拠点として使用していた場合、退去を求めても容易に応じてもらえないことが考えられます。

また、契約書に「倉庫」と記載されていても、契約締結時の合意内容や実際の使用状況などによっては、居住用建物の賃貸借としての性質が問題になる場合もあります。

特に、普通建物賃貸借契約では、貸主からの更新拒絶や解約申入れについて、借地借家法上の正当事由などが問題になることがあります。

なお、借地借家法は事業用の建物賃貸借にも原則として適用されるため、倉庫として貸していれば自由に契約を終了できるというわけではありません。

貸主としては、契約時に想定していなかった居住利用によって、契約関係が複雑になることを避けたいところです。

近隣トラブルや建物管理上の問題

貸し倉庫は、工場や物流施設などが集まる地域に所在していることも多く、周辺環境が居住に適しているとは限りません。

例えば、早朝や深夜の車両の出入り、荷物の積み下ろし作業による騒音などが、居住する借主とのトラブルにつながる可能性があります。

反対に、借主の生活に伴う騒音やゴミ出し、駐車場の使用方法などが、近隣の事業者とのトラブルにつながることも考えられます。

また、倉庫としての使用を前提に管理していた建物に居住者がいることで、貸主の建物管理における負担が増える可能性もあります。

3.倉庫兼住居として貸す場合の注意点

倉庫と住居を兼ねた使用方法には、特に次のような点に注意が必要です。

建物の用途や用途地域を確認する

倉庫の一部を住居として使用する場合には、建築基準法上の用途や用途地域による制限を確認する必要があります。
例えば、工業専用地域では原則として住宅を建築できないため、倉庫の一部を住居に変更することが認められない場合があります。

また、倉庫の一部を住宅に用途変更する場合、変更する部分の床面積や建物の状況などによって、建築確認申請が必要になることがあります。

なお、建築確認申請が不要な場合であっても、建築基準法などの関係法令に適合している必要がある点には注意が必要です。

居住部分の安全性や設備を確認する

倉庫の一部を住居として使用する場合には、居住部分が住宅として必要な安全性や設備を備えているか確認することが重要です。
例えば、採光や換気、避難経路、防火対策などについて、住宅として求められる基準を満たす必要があります。

また、倉庫内で商品や資材などを保管する場合には、居住部分との区画や火災時の安全性についても十分に検討しなければなりません。
トイレや流し台、エアコンなどが設置されているからといって、その場所をそのまま住居として使用できるとは限りません。

賃貸借契約の使用目的を明確にする

倉庫兼住居として貸し出す場合には、賃貸借契約書に建物の使用目的を明確に記載しておく必要があります。
例えば、倉庫として使用する部分と居住部分を区分し、それぞれの使用範囲を明らかにしておくことが考えられます。

また、居住を認める人数や、居住部分の増設・変更を行う場合の承諾手続きなどについても、必要に応じて取り決めておくとよいでしょう。
なお、倉庫と住居を兼ねた賃貸借では、実際の使用状況などによって、賃料に対する消費税の取扱いにも違いが生じる場合があります。

そのため、契約内容や賃料の設定についても慎重に検討する必要があります。

貸主としては安易に承諾しないことが大切

倉庫兼住居としての使用は、一定の条件を満たせば可能な場合もあります。

しかし、倉庫として建築された建物を住居として使用するには、法令上の確認や設備の改修などが必要になることがあり、貸主にとっても負担やリスクが増える可能性があります。

借主から倉庫兼住居として使用したいと申し出があった場合には、安易に承諾せず、建築士や関係行政機関などに確認したうえで慎重に判断することをおすすめします。

特に、住居としての使用を想定していない一般的な貸し倉庫であれば、本来の用途である倉庫として貸し出すことを基本に考えた方がよいでしょう。

4.倉庫として貸したのに借主が住み始めたら?

貸し倉庫を倉庫として賃貸しているにもかかわらず、借主が貸主に無断で住み始めてしまうケースも考えられます。
例えば、倉庫内にベッドや生活用品を持ち込み、寝泊まりをするようになったり、倉庫の一部を生活スペースに改装したりする場合です。

このような状況が判明した場合、貸主としてはどのように対応すればよいのでしょうか。

まずは実際の使用状況を確認し、賃貸借契約の内容に照らして適切に対応することが重要です。

まずは借主の使用状況を確認する

倉庫内で寝泊まりしている様子が見られたとしても、それだけで直ちに住居として使用していると判断できるとは限りません。

例えば、仕事の都合で一時的に仮眠を取っている場合と、日常生活の拠点として継続的に居住している場合とでは、使用の実態が異なります。

そのため、借主に事情を確認し、どのような目的で建物を使用しているのかを把握することが大切です。

なお、使用状況を確認する際には、借主の承諾なく建物内に立ち入るなどの行為は避け、適切な方法で事実確認を行う必要があります。

借主に使用方法の是正を求める

借主が契約上認められていない居住利用をしていることが確認できた場合には、まず使用方法の是正を求めることが考えられます。

例えば、居住目的での使用を中止し、契約で定められた倉庫としての使用に戻すよう求めます。

この際、口頭での注意だけでなく、必要に応じて書面で通知し、是正を求めた内容や経緯を記録しておくことも重要です。

また、借主が無断で間仕切り壁や浴室、キッチンなどを設置している場合には、工事内容や建物への影響を確認し、必要に応じて原状回復について協議することになります。

是正に応じない場合の対応

借主が居住利用を中止するよう求められても応じない場合には、契約解除を含めた対応を検討することになります。

ただし、建物賃貸借契約では、契約違反があれば必ず解除できるというわけではなく、違反の程度や経緯などによって判断が異なります。

また、貸主が一方的に鍵を交換したり、電気や水道を止めたり、借主の荷物を撤去したりすることは、違法な自力救済として問題になるおそれがあります。

借主が是正に応じず、契約解除や明渡しを検討する場合には、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

5.貸主が契約書で定めておきたいこと

貸し倉庫を住居として使用されるトラブルを防ぐためには、賃貸借契約を締結する際に、建物の使用目的や禁止事項を明確にしておくことが重要です。

特に、倉庫として貸し出す場合には、借主がどのような用途で使用するのかを事前に確認し、その内容を契約書に反映させておくことが望ましいでしょう。

「倉庫として貸しているのだから、当然住居として使用することはないだろう」と考えず、契約書で使用方法を明確にしておくことがトラブルの予防につながります。

居住目的での使用を禁止する

倉庫として貸し出す場合には、居住目的での使用を禁止する条項を設けておくことをおすすめします。

例えば、次のような文言が考えられます。

契約条項の記載例

「乙は、本物件を居住の目的で使用してはならず、また、甲の書面による事前の承諾なく、本物件内において継続的な宿泊その他居住の実態を伴う使用をしてはならない。」

このように、居住目的での使用を禁止することを明確にしておけば、借主が無断で住み始めた場合にも、契約違反の有無を判断するうえで役立ちます。

なお、倉庫内での一時的な休憩や仮眠についても制限する場合には、その範囲を具体的に定めておくことが考えられます。

無断での改修工事や設備の設置を禁止する

借主が倉庫を住居として使用するために、間仕切り壁や浴室、キッチンなどを無断で設置することも考えられます。

このような工事は、建物の構造や設備に影響を与えるだけでなく、建築基準法や消防法などの関係法令上の問題につながる可能性もあります。

そのため、貸主の事前承諾なく、建物の改修工事や設備の新設・変更を行ってはならない旨を契約書に定めておくことが重要です。

また、貸主が工事を承諾する場合には、工事内容や費用負担、契約終了時の原状回復についても、書面で取り決めておくことが望ましいでしょう。

契約違反があった場合の対応を定める

借主が契約で禁止されている居住利用を行った場合に備えて、違反行為の是正や契約解除に関する条項を設けておくことも大切です。

例えば、借主が契約上の使用目的に違反した場合には、貸主が違反行為の中止や是正を求めることができる旨を定めておきます。

また、是正要求に応じない場合などには、契約解除を検討できる旨を規定することも考えられます。

ただし、契約書に解除条項を設けていても、違反があれば必ず契約を解除できるわけではありません。

実際の解除の可否は、違反の内容や程度、貸主と借主の信頼関係などを踏まえて判断されるため、注意が必要です。

契約書だけでなく使用方法の確認も重要

賃貸借契約書に居住禁止の条項を設けておくことは重要ですが、それだけですべてのトラブルを防げるわけではありません。

例えば、契約書では倉庫としての使用を定めていても、貸主が借主の居住利用を知りながら長期間にわたって容認していた場合には、後になって使用方法をめぐる争いが生じる可能性があります。

そのため、契約締結前に借主の使用目的を十分に確認するとともに、賃貸開始後も契約内容に沿った使用が行われているか、適切に管理することが大切です。

6.「住みたい」という問い合わせがあったときの対応

貸し倉庫の入居募集をしていると、借主から「倉庫に住むことはできますか?」「仕事場として使いながら寝泊まりしたいのですが」といった問い合わせが寄せられることも考えられます。

貸主としては、空室を早く埋めたいという気持ちから、多少の居住利用であれば認めてもよいと考えるかもしれません。

しかし、倉庫として募集している物件については、住居としての使用を安易に承諾しないことが重要です。

まずは具体的な使用目的を確認する

借主から住居としての使用について問い合わせがあった場合には、まず、どのような使い方を希望しているのか確認しましょう。

例えば、仕事の合間に一時的な仮眠を取りたいのか、倉庫の一部に生活スペースを設けて継続的に居住したいのかによって、使用の実態は大きく異なります。

また、借主本人だけが使用するのか、家族なども一緒に生活する予定なのかといった点も、確認しておきたい事項です。

「寝泊まりするだけ」という説明であっても、実際には生活の拠点として使用する予定である可能性もあるため、具体的な使用方法を確認することが大切です。

居住を認めない場合は明確に伝える

貸主として住居利用を認めない方針であれば、問い合わせの段階で、その旨を明確に伝えておくことをおすすめします。

例えば、「当物件は倉庫としての使用を目的に貸し出しているため、住居としての使用は認めておりません」と説明するとよいでしょう。

曖昧な返答をすると、借主が「多少の寝泊まりであれば認めてもらえる」と受け取ってしまう可能性があります。

契約後のトラブルを防ぐためにも、貸主が認める使用方法と認めない使用方法を、契約前にはっきり伝えておくことが重要です。

居住を認める場合は事前に十分な確認をする

どうしても倉庫兼住居としての使用を検討する場合には、建築基準法や消防法などの関係法令に適合するか確認する必要があります。

また、建物の構造や設備、用途地域による制限、火災保険の契約内容などについても確認が必要です。

必要に応じて、建築士や関係行政機関、保険会社などに相談し、居住利用に問題がないか確認しましょう。

さらに、居住を認める場合には、使用できる範囲や改修工事の条件、費用負担などを明確にし、賃貸借契約の内容にも反映させることが重要です。

無理に貸し出さないことも大切

貸し倉庫の空室期間が長くなると、貸主としては、できるだけ入居希望者の要望に応えたいと考えることもあるでしょう。

しかし、居住を想定していない倉庫を住居として貸し出すことで、法令上の問題や事故、契約上のトラブルなどが発生すれば、結果的に大きな負担につながる可能性があります。

貸主としては、目先の賃料収入だけで判断せず、建物の用途や安全性、将来的な管理上のリスクを踏まえて判断することが大切です。

住居としての使用を希望する借主に無理に貸し出すよりも、本来の用途である倉庫として使用する借主を探す方が、長期的には安定した賃貸経営につながると考えられます。

7.まとめ|貸し倉庫の住居利用は慎重に判断しましょう

貸し倉庫を住居や倉庫兼住居として使用することは、一律に禁止されているわけではありません。しかし、倉庫として建築された建物を住居として使用する場合には、建築基準法や消防法などの関係法令をはじめ、建物の安全性や設備、賃貸借契約など、さまざまな点について確認する必要があります。

貸主としては、空室対策や賃料収入の確保を優先するあまり、借主からの居住希望を安易に承諾することはおすすめできません。

また、倉庫として貸し出す場合には、契約書で使用目的や居住禁止の事項を明確にし、契約後のトラブルを未然に防ぐことも重要です。

貸し倉庫は、本来の用途である倉庫として貸し出すことを基本とし、住居としての使用については慎重に判断することが、安定した賃貸経営につながります。

当社では、貸倉庫・貸工場などの事業用賃貸物件について、入居者募集や賃貸仲介を行っています。

貸し倉庫の空室でお困りのオーナー様や、入居者募集をご検討されているオーナー様は、ぜひ当社への客付けをご検討ください。

貸倉庫・貸工場の入居者募集に関するご依頼は、下のお問い合わせフォームへのリンクから承っております。